玉野勢三

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 テラコッタ作品はどんな粘土を使って作るかと、どのように焼くかで大きく変わります。ほんのりとあたたかな色目になるように、信楽の白土と赤土を混ぜて使います。
 赤土と白土がしっかりと混ざるように、菊練りという練り方で十分に練り合わせます。菊練りというのは、手のひらで練った跡が、菊の花びらのような形になるからです。
 「おとぎの森」の作品は複雑な形をしているので、型こめという技法で、5個の部分に分けた石膏の型を使います。
 よく乾燥した石膏型に、しっかりと粘土を込めてゆきます。表面にしわが寄ったり、空気が混ざったりしないように気を付けて粘土を込めます。
 粘土が平均して同じ厚さに込められているかどうか、針金を粘土に刺して調べます。粘土の厚さにむらがあると、焼成したときに壊れてしまうからです。
 粘土の合わせ目にヘラでキズを入れ、そこにべと土を塗っていきます。
 石膏型がぴったりと合うように気を付けながら、型を合わせていきます。 石膏が粘土の水分を吸い取って、型から離れやすくなるまで少し時間を置きます。
 粘土に傷をつけないように、細心の注意を払いながら石膏型を外してゆきます。
 型からはずされた粘土の作品は、接着面が乾燥しないように、ラップで覆います。
 一つずつ部分を組み合わせていきます。べと土でしっかりとくっつけた後、ヘラでよく押さえてゆきます。しっかりとくっつけないと、後からひびがはいったり割れたりします。
 型の合わせ目にできるバリを修正していきます。
 五個の部分が組み合わさり、全体の形が見えてきました。これからがテラコッタ制作の一番楽しいところです。型から抜き出して終わりではなく、ある意味でこれからがスタートなんです。
 粘土の乾燥に応じて、顔などの細かな表情や形などを作っていきます。ですから、同じ型からとった作品でも一つ一つみな違ってきます。
 粘土のやわらかい状態での仕事が終わり、サインを入れ作品は乾燥されます。
 粘土が乾燥して、色がだんだん白く変わりました。
 粘土は乾燥すると固くなって石のようになります。この段階で、ヤスリやサンドペーパーを使って作品をこすり、子供の持っている肌の丸みやあたたかさを表現しています。
 粘土作品が完成し、太陽の日差しと風に当てて完全に乾燥させます。
 今回の作品は均一に焼ける電気の窯で焼成する事にしました。細心の注意を払いながら、一点ずつ窯につめてゆきます。
 約800度の温度になるまで、15時間焼成されます。焼成が終わって二日後、窯の温度も下がり、いよいよ窯出しです。いつも一番緊張する瞬間です。
 思っていたとうりの暖かな色目に焼きあがりました。テラコッタの良さは、粘土の持つやわらかさ、素朴なあたたかさがそのまま残っていると言うことです。
 作品を見て気になる所の手直しをします。底をサンドペーパーで擦りなめらかにします。
 このままでは少し色目が単調なので、ベニガラで調子を付けています。ベニガラと言うのは鉄分の多い赤色の顔料の事です。指や手のひらにすり込まれたベニガラで、作品にほんのりと色を付けてゆきます。
 作品に赤味が加わり表情に輝きが増してきました。ベニガラでお化粧された作品が出来上がりました。松脂をアルコールで溶かしたものをスプレーでかけ、ベニガラを定着させます。
 これで作品の完成です。思い描いていたとおりの、あたたかく夢のある作品になりました。